院長こらむ:前立腺のお話 その1

ときどき、前立腺肥大症などで診ている方の奥さんから、”私の前立腺は大丈夫でしょうか”と質問されることがあります。前立腺は、男性だけにある臓器です。尿は、左右にある腎臓(脊柱と一番下の肋骨で囲まれた左右の腰部にあります)で作られ、尿管という細い管を通って、下腹部の膀胱に貯まります。その膀胱の出口に前立腺が存在します。毛が生えているところに触れる恥骨の裏側にあります。膀胱から続く尿道が前立腺の中心を貫いています。
 正常な前立腺の大きさは、年齢により少し異なりますが、大体15-20mlと言われています。最近の画像診断装置の進歩により、前立腺全体の大きさは、超音波検査で正確に測定できるようになりました。小生が医者になった頃(約30年前)は、おしりの中から前立腺を指で触り、大きさを推定していました。欧米の受け売りで、正常をくるみ大と表現していましたが、胡桃を見たことのない者にとっては、何か適当だったような気がします。前立腺の内部組織の領域区分は、下の教科書から取った写真のように、辺縁領域(PZ)中心領域(CZ)移行領域(PZ)に分けられ、説明されています。以前は、内腺(TZが主で、CZも含まれる)外腺(PZが主)と言われていました。このように分ける理由は、もちろん、発生学的違いもありますが、前立腺の2大疾患である前立腺肥大症は、内腺に発生し、前立腺癌の多くは、外線に発生するという事実が、重要な相違です。
 膀胱に続く前立腺部尿道(前立腺貫通部)の中央やや下に豚の鼻のような形をした突起があります。これを精阜または、精丘と呼びます。この鼻の穴から、興奮?が最高潮に達しますと、精液が飛び出してきます。精子は、精巣で造られ、精管を通って(脚の付け根:鼠径部から膀胱の裏側を通って前立腺に入る)前立腺液と混じります。これが精液です。精液がなぜ尿道から勢いよく飛び出すかと言いますと、射精時、自律神経(交感神経と副交感神経)の協調作用で、膀胱の出口(膀胱頚部)および前立腺外側の筋が痙攣するように収縮し、一方、それと同調して尿道括約筋が弛緩するからです。この一連の感覚が、男性が求めている快感につながるものです。精巣から運ばれてきた精子を前立腺の分泌液が含んで体外に出します。精液の大部分が前立腺液です。また、前立腺液は、精子が女性の子宮で受精するまでの保護や運動エネルギーを供給するもとになります。このように、前立腺は、男性の生殖機能と深い関係があり、男性ホルモンとも密接に関係しています。男性ホルモンが豊富だと大きくなり、少ないと、小さくなります。男性ホルモンは、大部分が精巣で造られ、ごく一部が副腎でも造られます。
 さて、前立腺の病気の代表的なものは、高齢男性を悩ます前立腺肥大症と前立腺癌です。この他に、細菌による、または細菌に関係の無い、炎症疾患があります。若い男性の場合、クラミジアなどを原因菌とする性病としての前立腺炎も見逃してはいけない病気です。次は、前立腺の病気のいろいろについて述べてみます。

教科書を直接撮りましたので、小さく、すこしピンボケですみません。上の半分切れているのが膀胱です。その下に前立腺があります。前立腺の内部領域で、膀胱の出口近くにあるのがCZ(桃色),尿道の周辺にあるのがTZ(緑色),下側の外よりにあるのがPZ(青色)です。 琵琶湖の東に位置する近江路・湖東三山(西明寺、金剛輪寺、百済寺)は、紅葉の名所として知られています。西明寺の紅葉です(08・11/15)。
金剛輪寺の紅葉です。真ん中の白い花は、秋に咲く桜です。 同じく金剛輪寺です。
百済寺の紅葉です。 同じく百済寺です。