院長こらむ:前立腺のお話 その4

それでは、前立腺癌はどうやって発見するのでしょうか。前立腺癌は、前立腺の外側に発生するものがほとんどですので、真ん中を通る尿道まで浸潤するのに時間がかかり、なかなか症状(排尿障害、血尿、頻尿など)が出ません。小生が医者になった30年前頃は、腫瘍マーカー(腫瘍を発見する目安となる血液検査)としては、酸性フォスファターゼという検査がありましたが、感度が悪く、もっぱら、おしりの中から指で前立腺を触って、その硬さが目安となっていました。骨転移による腰痛で、整形外科より紹介される進行した前立腺癌の患者さんも多くおられました。
 最近は、前立腺特異抗原(PSA:prostate specific antigen)という非常に優れた腫瘍マーカーが発見され、症状の無い初期前立腺癌を見つけることが出来るようになっています。正常は、一応4ng/ml以下となっていますが、4以下だと言っても100%安心は出来ません。2-4の方で、前立腺が小さく、しかも60歳以下の方は注意が必要です。すぐに精査は要りませんが、年次的にPSAの推移をみた方が良いでしょう。PSAが高値になる要素は、前立腺癌の他に、前立腺の大きさと炎症が関係しています。当院に於けるPSAの値別の前立腺癌検出率は、HP/手術実績の項に載せていますので参考にしてください。早期前立腺癌の発見の多い4-10ng/mlの範囲をグレイゾーンと呼び、だいたいどこの施設も30%前後と思います。
 前立腺癌を正確に診断するための検査は、前立腺生検です。おしりの中、または、肛門の少し前側(会陰部)より、超音波(エコー)を見ながら、それ専用の針を用いて前立腺内部の組織を採ってきます。1mm程度の直径で長さ1-1.5cm程度の組織片です。だいたい6個から12個採取します。それを染色後、顕微鏡で癌組織がないかを調べます(病理検査)。病理検査では、癌の悪性度(癌組織の顔?の悪さ:正常よりどの程度かけ離れているか)を診ます。癌が確定診断されたら、今度は、癌がリンパ液または血液の中に入って、転移をしていないかを調べます(浸潤度検査)。所属リンパ節(最初に捕まるリンパ節)や他の臓器への転移(遠隔転移)は、CT,MRI,骨シンチグラフィーを用いて調べます。
 これらの検査で、前立腺癌の悪性度と浸潤度の診断が出来ます。次は治療法の選択です。次の機会に載せたいと思います。

3/8 春を見つけました。玉名温泉街の早咲き桜です。 ベトナム戦争時代のベトコンが使用していた地下道の入り口です。べ平連(ベトナムに平和を連合:主催者の作家・小田実氏は亡くなってしまいました)のデモに出た青春時代を思い出します。
落とし穴です。鋭い槍が地下に設置されています。容易にアメリカ兵がジャングルに入れないように作ったものです。 近代的になった現在のホーチミン市(昔のサイゴン)です。