院長こらむ:膀胱のお話 その2

膀胱は、尿を長時間貯留する臓器ですから、腎臓から排泄された種々の代謝産物に曝されることになります。それらの物質が膀胱に障害を起こすこともまれではありません。その代表的なものが、膀胱炎と癌発生です。
ある特定の薬剤を治療に使用した場合に膀胱炎が起こることがあります。これを薬剤性膀胱炎と言います。薬に対する膀胱のアレルギー反応や、投与薬剤の代謝産物による膀胱粘膜への直接作用によると考えられています。これらの薬剤には、抗癌剤、胃潰瘍の薬、漢方薬の一部や、面白いことに、抗アレルギー剤も含まれます。小生が、まだ、医者になって間もない頃、血尿を伴う膀胱炎症状(出血性膀胱炎)の患者さんが、なかなか治らなく、悩まされたことがあります。その原因が、喘息の治験治療に使用されていた抗アレルギー剤でした。まだ若かったので(30年以上前)、薬剤性膀胱炎が知識に入っていませんでした。この治験薬は、現在発売もされ、よく使われる薬になっています。もちろん、副作用に出血性膀胱炎が記載されています。
体内に吸収された発癌性物質は、腎臓から排泄されるものも多く、また、血中濃度より濃縮されて排泄され、しかも膀胱は、比較的長く被爆されます。昔から染め物や塗料を扱う仕事をしている者に膀胱癌の発生が多いことが知られていました。今では、膀胱癌に関連があるとされる化学物質が数種類同定されています。この化学発癌は、膀胱癌の原因の25~30%と考えられており、被爆開始後、40~50年後に発癌すると言われています。このように、膀胱癌は、職業病の一つです。
膀胱癌の危険因子の1位は、この化学薬品への被爆ですが、危険因子2位は、喫煙です。血中に入ったニコチン・タールは、腎臓から濃縮排泄され、膀胱を繰り返し暴露します。喫煙と膀胱癌との関係は疫学的にも証明されています。タバコは、肺癌だけの原因物質ではありません。
タバコは、百害あって一利なしです。喫煙は、たばこ産業を儲けさせ、医療産業に損害を与えています。JTが医療産業に参入してきていますが、その矛盾を感じるのは私だけでしょうか。

本日(7/19)は海の日で、全国休日です。梅雨も明け、熊本は、35度以上の猛暑日になりました。