院長こらむ:精巣(睾丸)のお話 その1

 精巣(睾丸)は、陰茎(ペニス)とともに男性のシンボルとされる臓器です。ペニスの付け根(陰茎根部)から垂れ下がった袋(陰嚢)の中に2個納まっています。精巣は、弾性がある卵形で、体積は、10~15cc程度でしょう。精巣を納めた袋の皮膚はしわだらけです。このしわには、わけがあります。しわで表面積を増し、袋内の温度を体内より下げています。いわゆる、車のラジエーターの役目をしています。精巣で造られる精子は、体内の温度(37度以上)では、数も少なく、動きも悪くなると言われています。この陰嚢のラジエーターの働きで、精子が効率よく造られることになるわけです。精巣の温熱的障害を起こすものとして、左精索静脈瘤という先天的な病気があります。精巣からの静脈(精索静脈)が大きな静脈に流れ込むまでの走行は、だれでも左右で違っています。右は、足の付け根からお腹の中へ入り、近くの大静脈に流れ込みます。ところが、左の方は、さらに上方の左腎静脈まで上がらないとなりません。このように、左の静脈が長く、うっ滞しやすい上に、静脈に付いている逆流防止弁が十分に閉じないと、静脈が血液のうっ滞で拡張し、静脈瘤が生じます。このように、陰嚢内に静脈瘤が出来ると、血液の温度(体内温度)のため、陰嚢内温度が上がり、精子を造る能力が落ちてしまいます。これが、男性に原因のある不妊となります。この治療法は、左精索静脈(精巣から還る静脈)を左腎静脈への途中で切断することです。やがて、下方の細い静脈に流れる量が多くなり(側副血行路)、径も太くなり、より低いところの静脈に流れ込み、陰嚢内のうっ血が解消されます。これによって、陰嚢内の温度は下がり、精子を造る能力も回復します。
次回は、精巣の働きについてお話します。
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