院長こらむ:精巣のお話 その2

 今回は、精巣の働きについて、簡単に述べようと思います。精巣が本来の働きを始めるのは、思春期以降です。二つの大事な役目があります。その一つは、生殖(子供を造ること、子孫を残すこと)のための精子を造ることです。もう一つの役目は、男性ホルモン(テストステロン)を産生し、血液の中に送り込むこと(内分泌)です。この二つの働きは、お互いに、密接に関係しています。男性ホルモンがないと精子を造る能力は障害されますし、ましてや、性欲もなく、ペニスの勃起も起こりませんので、生殖は不可能です。このように、男性にとって、最も大切な臓器です。精子は、精巣の中心にある精細管という極細い管の内側をおおっている細胞が連続的に発育して造られます。ちょっと専門的になり恐縮ですが、管内腔の一番外側(底)に精祖細胞があり、これが発育して、精母細胞となり、次に精子細胞となり、最後に精子となって、内腔に放出されます。精子は、精細管が集まった精巣網から輸出管へ、それが一本となり、精巣上体(副睾丸とも言います。精巣の横に付いている唐辛子状のもの)内を、どぐろをまくように管が長くなっており、その中で、成熟し、精管へと移行します。精管は、脚の付け根(鼠径部)から膀胱の裏へまわり、前立腺内へ入り、最後は、射精という行為で、射精口より尿道へ放出されます。この射精のメカニズムについては、次回述べたいと思います。一方、男性ホルモンは、精細管の外にあるライデイッヒ細胞で造られ、血管内へ放出されます。このホルモンにより、二次性徴が起こり、より男性的に変化していくわけです。昔、中国では、お妃に遣える男性は、精巣を取ってしまう規律がありました。これを宦官(かんがん)と言い、のちに、この宦官が権力を持つようになります。
精子が通過する管(精路)を示します。精細管ー精巣網ー輸出管ー精巣上体ー精管ー前立腺内射精管ー射精口  蓮池潭(台湾・高雄)にある左営慈済宮龍虎塔。医学(健康)を奉るものとのこと。