院長こらむ:泌尿器科疾患における痛み その2

  4)排尿痛:疼痛が、排尿のどの時期に主に感じるかによって、排尿初期痛・排尿終末時痛・全排尿痛に分けます。排尿初期痛は、膀胱の出口あたりに疼痛の原因がある場合で、前立腺炎や前立腺尿道部に結石などの異物が詰まった場合に見られます。排尿終末時痛は、排尿の終わり辺り、つまり、膀胱内容物が空になるころに、尿道の奥の辺りで感じる疼痛です。膀胱粘膜に痛みの原因があり、急性膀胱炎の時の特徴的な痛みです。これに、残尿感も同時に感じます。尿管結石が、膀胱壁内(尿管口)まで下降してきた時も同じ症状があります。ただし、尿検査を行うと、急性膀胱炎の場合は、膿尿(白血球多数)としばしば血尿もありますが、結石の場合は、ほとんど血尿のみです。全排尿痛で、尿道が主部位の場合は、尿道炎です。女性の場合は、尿道が短い(5-6cm)ため、尿道炎単独でくることは少なく、尿道膀胱炎の形をとります。また、時に、排尿時、出口(膣)がしみると訴えられることがあります。これは、外尿道口周囲(膣前庭部)の炎症を合併されています。老人性膣炎を合併されている場合や若い女性はセックス後の炎症に見られます。ときどきカンジダ(一種のカビ)性膣炎であり、婦人科的治療を要します。男性の場合は、ほとんど性病です。焼け付くような排尿痛が出現し、外尿道口より黄色調の膿が排出すれば、まず、淋病でしょう。脛に傷ある身であれば、まず、間違いないでしょう。加害者になる前に完治させるべきです。性感染症(STD)における尿道炎には、淋病の他に、クラミジア感染症が知られています。クラミジア性尿道炎の場合は、尿道痛は少なく、尿道の違和感・ムズムズ感で、割とサラサラした分泌物が排出します。最近は、両者の同時感染も多く、菌の検出は必ず必要で、完治したかの確認も絶対必要です。

 5)陰嚢内疼痛:いわゆる睾丸の入った袋を陰嚢と言います。この中の内容物が痛いときがあります。一番多いのは、精巣上体(精子が成長して通過する細長い管の集まりで精巣(睾丸)の横に付いています)に炎症を発生した時です。細菌性炎症で、高熱を来たし、陰嚢全体が真っ赤に腫れた状態を急性精巣上体炎と言います。亜急性またま慢性の場合、精巣上体に硬い塊を触れ、触ると軽い痛みの場合があります。昔は、結核によるものが多く、小生の医者に成り立ての頃は、精巣上体を摘出し、病理組織で確認していました。最近は、クラミジア感染(性病)の場合が多いと言われています。精巣炎で有名なのは、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)後の合併症です。これ以外の精巣炎はまれです。ときどき新婚で房事過多の場合、マスターベーションのやり過ぎ?の時、精巣痛がみられると言われていますが、病的疼痛ではないでしょう。
 6)会陰部痛・鼠径部痛:肛門と陰嚢の間辺りを会陰部(えいんぶ)、陰嚢に連なる足の付け根の辺りを鼠径部(そけいぶ)と言います。両方の痛みを伴う時は、まず、前立腺炎を考えます。鼠径部痛があり、その部が腫れている時は、下肢の炎症後のリンパ節炎か、性病の一つに鼠径リンパ肉芽腫があります。鼠径ヘルニア(脱腸)のかんとんもありますので、注意が必要です。また、男性の場合、立った時、左陰嚢内がなにか違和感で大きくなり、時に疼痛を伴う場合、左精索静脈瘤があります。若い男性の場合、不妊症の原因になることがあり、手術で子供さんを授かることがあります。中高年で急に出現した場合、膵臓尾部癌の合併を経験したことがありますので、要注意です。

長野・善光寺三門:長野オリンピック10周年記念で五色のライトアップをされていました。(08・02・14) 善光寺本堂
善光寺本堂内 善光寺表参道のゆめ灯り絵展:門前石畳の上に140の灯明が並んでいました。