院長こらむ:アンチエイジングのお話 その8

最近、前立腺肥大症の治療薬として、PDE5阻害薬の使用が健康保険適応となりました。PDEとは、ホスホジエステラーゼの略語です。正常な排尿時には、非交感非副交感神経(自律神経以外の神経繊維)末端から一酸化窒素(NO)が分泌され、速やかに平滑筋細胞内に取り込まれ、環状グアノシン一リン酸(cGMP)産生を増加させます。これが、膀胱の出口(膀胱頚部・前立腺)の平滑筋を弛緩させ、より良い排尿になるとされています。加齢が進むと、このNO/cGMPの活性が低下し、膀胱出口の平滑筋の弛緩状態が悪く、排尿障害が起こりやすくなります。産生されたcGMPは、ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)によって分解されます。この分解酵素の働きを抑えれば、結果として、cGMPが増加し、より平滑筋が弛緩されることとなります。この酵素の働きを抑える、PDE5阻害薬は、初め、狭心症の治療薬(心臓冠動脈の平滑筋弛緩)として開発されましたが、なぜか、陰茎静脈平滑筋との親和性が高く、EDの治療薬として有名になった経緯があります。その後、膀胱出口付近の平滑筋にも作用し、排尿障害を改善することがわかり、前立腺肥大症の健康保険適応薬となりました。
NO/cGMP の活性化はアンチエイジングに役立つのではないかと考えられます。PDE5阻害薬の常用により、ほどよい血管拡張が起こり、血流改善により、酸化ストレスの減少が起こるはずです。また、高齢者に多い高血圧にも作用し、降圧剤の減量にもなるかもしれません。前立腺肥大症の治療薬となっていますが、骨盤内血流の改善も期待されています。加齢に伴う動脈硬化、高血圧などによる膀胱虚血から発生すると言われている過活動膀胱や間質性膀胱炎の諸症状(尿意切迫、頻尿、膀胱充満時疼痛、下腹部不快感など)に役立つ可能性もあります。さらに、男性には、違った意味で福音(保健適応)かもしれません。ただし、狭心症薬(ニトログリセリン)の併用は禁忌です。また、前回述べたメラトニンも作用部でNO増加が発生すると言われています。今後、アンチエイジングに、NOの働きが注目されるかもしれません。

長崎鼻より開聞岳(鹿児島県指宿市・日本百名山)を望む。円錐形の美しい山容です。その形より”薩摩富士”と呼ばれています。 登山口(’15・9/20)
開聞岳五合目より長崎鼻を望む 開聞岳頂上(924m)より池田湖を望む。この日は、霞んでいて、見晴らしは、今一歩でした。