院長こらむ:アンチエイジングのお話 その11

熊本地震から3ヶ月が過ぎました。被災地熊本は、この梅雨シーズンでも豪雨に見舞われ、数名の死者を含めた被害が出ています。自然の怖さが、ことさら感じられるこの頃です。早く、梅雨が明け、また、余震も終了することを祈っています。ただ、今年は、猛暑が予報され、未だに避難されている被災地の方々の健康を心配しています。

さて、腸内細菌には、人に有用な働きをする、いわゆる善玉菌(ビフィドバクテリウム属、ラクトバシラス属、など:乳酸や酪酸などの有機酸を作る細菌)や、人に有害な働きをする、いわゆる悪玉菌(ウェルシュ菌や大腸菌など:腐敗物質を産生する細菌)と、そのときの細菌叢の状況により、有益にも、有害にもなりうる、いわゆる日和見菌(バクテロイデスなど)に分けられます。一般に、善玉菌20%、悪玉菌10%、日和見菌70%が腸内細菌叢(フローラ)の良いバランスと言われています。なお、腸内細菌の代表みたいに思われている大腸菌は、全体の0.1%以下にすぎません。このバランスを保つことが健康の証であり、アンチエイジングに繋がると思われます。最近、糞便中の善玉菌と悪玉菌の比率を調べる検査が手軽にできるようになっています。

バランスのとれた腸内細菌叢(フローラ)の主な働きは、以下のものが知られています。
1)体内に侵入してきた病原細菌を、自らの縄張りから追い出す(排除)
2)消化できない食物繊維の消化を助け、エネルギー源とする。
3)ビタミンB類(B2,B6,B12)葉酸、パントテン酸、ビチオン、ビタミンKなどのビタミン類を作る。
4)ドーパミンやセロトニンを合成し、その前駆体を体内へ吸収させ、脳に作用させて、人の気分に影響する。
5)腸粘膜細胞と共同で、免疫機能に関与する。

驚くべき働きを、腸内細菌はしています。以上からわかることは、この腸内細菌叢(フローラ)のバランスを保つことが、健康維持に大切ということです。しかし、そう簡単ではありません。逆に、このバランスを乱す原因を知り、それを避ける生活習慣を身につけたほうが良さそうです。その原因は、多面的で、一つ一つの小さな事が重なり、腸内細菌叢(フローラ)のバランスを乱しています。

● まず、考えられるのが食習慣です。肉中心の食餌をとり続けると、いわゆる悪玉菌の活動が強くなることが知られています。悪玉菌は動物性タンパク質などをエサにして、硫化水素やインドール、スカトール、アンモニアなどの有害物質を作り出します。大腸癌は、肉中心の食生活の人に多いことも知られています。

● 生活リズムの乱れは、食事時間もまちまちとなり、睡眠も十分でなくなり、自律神経が乱れてきます。自律神経が乱れると、主に、交感神経優位となります。腸蠕動運動が不規則となり、便秘にもなりやすく、腸内環境を悪くします。

● 腸内細菌叢(フローラ)の構成は、年齢とともに変化します。一般に、中年以降、善玉菌のビフィズス菌の数が減っていき、悪玉菌のウェルシュ菌や大腸菌が増えていきます。年齢はどうしようもありませんが、意
識的に善玉菌を増やす努力をすることで、腸内細菌叢(フローラ)のバランスを保つようにするしかありません。

● 生活リズムの乱れと繋がりますが、ストレスも重要な腸内細菌叢(フローラ)の乱れの原因となります。現代社会は、いろいろなストレスを抱えた社会となっています。ストレスが強くなると、自律神経の乱れが生じ、前述したように、腸蠕動も乱れ、腸内環境が悪くなり、悪玉菌が増えると言われています。

このように、長期に腸内細菌叢(フローラ)のバランスを保つことは、食生活の変化や、現代のストレス社会では、なかなか困難になってきています。この腸内細菌叢(フローラ)のバランスの乱れから、様々な病気が引き起こされることもわかってきました。

次回は、腸内細菌叢(フローラ)と病気の関係について述べてみたいと思います。

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