院長こらむ:排尿のトラブル その4

排尿困難が高じると、全く排尿が出来なくなる状態を尿閉と前回記しました。この状態が、持続しますと、膀胱内圧がどんどん高くなり、ついには、尿道抵抗より高くなり、尿がちびちび漏れることになります。これを、溢流(いつりゅう)性尿失禁と言います。病態は、尿失禁(おしっこの漏れ)ですが、実態は、尿閉です。またの名を、奇異性尿失禁とも言います。原因は、前立腺疾患(前立腺肥大症、前立腺癌)が主です。頻度は少ないですが、膀胱の排出障害のため、排尿後の尿の残留(残尿)が大量で、すぐに、限界の膀胱容量に達してしまう方がおられます。病態として、頻尿・尿失禁となります。この方に、頻尿薬を与えますと、膀胱が益々弛緩し、症状がかえって悪化します。高齢者の方で腹筋が薄く、痩せ型の女性や、精神科通院中で向精神薬を服用中の方で起こりやすく、頻尿の訴えがあるからといって、すぐに、頻尿改善薬を与えず、必ず、残尿のチェックが必要となります。一般内科や精神科から、薬で頻尿が改善しないと紹介を受ける時、よく見かけられます。こういう時は、まず、いろいろの方法で、残尿をなくすことから始めます。薬の効果がなければ、時間毎の導尿(尿道から管を入れる)を行います。理解力のある方は、自らの導尿(自己導尿)を指導しています。これらが無理な方は、管(カテーテル)の持続留置にならざるを得ないでしょう。これも、尿道から留置するのでなく、下腹部より直接膀胱内に穴をあけて管を留置する方法(膀胱瘻(ろう))がトラブルが少なくてすみます。

花菖蒲と愛犬の柴犬(もも) 紫陽花と愛犬