院長こらむ : ワクチンのお話 その2

ワクチンは免疫機能を利用した予防的治療法です。18世紀末、ジェンナーにより天然痘の予防として種痘が開発され、その後、ある感染症にかかると次はかからないというメカニズムの研究が盛んになりました。そのメカニズムは、「二度とない」という意味のimmunityと名付けられました。日本語で”免疫”と訳されています。免疫を理解・整理する上でのキーワードは、自然免疫獲得免疫液性免疫細胞性免疫B細胞T細胞(リンパ球)です。

自然免疫とは、病原体が皮膚または管腔臓器の粘膜を破って侵入してきたときに最初に働く防御システムです。非自己と認識された病原体は、食細胞によって破壊されます。この防衛隊の兵士として働く食細胞にマクロファージと好中球(白血球の一分画)があります。病原体と戦い、自らも死滅した集団が膿(うみ)です。また、これらの防衛隊に援軍として働く血漿タンパク質があり、補体と呼ばれています。一方、これらの食細胞は侵入者を捕捉し、捕虜(抗原)としてリンパ節という収容所へ運び、T細胞という下士官に差し出します。下士官はこの捕虜の特徴を認識して次の防衛に備えます。これが獲得免疫です。

獲得免疫本部では、下士官のT細胞(ナイーブT細胞)から上官のB細胞やT細胞(ヘルパーT細胞)に捕虜(抗原)が差し出され、上官らは、その捕虜の仲間たちの共通特徴を認識し、分隊(メモリーB細胞およびメモリーT細胞)を組織します。B細胞の分隊は、抗体という飛び道具を武器とします。抗体とは、B細胞がすでに認識している病原体(抗原)と特異的に結合できるタンパク質の一種で、免疫グロブリンと呼ばれるものです。血液中や粘膜から分泌された抗体は病原体に直接結合してその毒性や活性を失わせます(中和作用)。さらに補体という特殊なタンパク質の力を借りて病原体を殺傷します。他方、T細胞の分隊は、武器としてインターフェロンやインターロイキンと呼ばれるサイトカインを敵(病原体など)に放ち、活動を減弱化するとともに、細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)を投入してゲリラ戦を展開し敵の撲滅に向かいます。B細胞は血液や粘膜分泌物などの液体の中に抗体を浮遊させて防御を行うので、これらの働きを液性免疫、これに対してT細胞が直接作用する免疫作用を細胞性免疫と言います。海軍と陸軍みたいですね。

今、新型コロナウィルスに対するワクチン接種が急ピッチで行われています。使用されているファイザー製、モデルナ製のワクチンはメッセンジャーRNA(m-RNA)ワクチンという種類です。m-RNAとは、自己と同じタンパク質を作るように指示された遺伝子です。今回のワクチンは、新型コロナウィルスの突起のm-RNAを特殊な膜で包んだものです。これを筋肉内に注射しますと、筋肉細胞の力を借りて新型コロナウィルス突起のタンパク質と同じものが作られます。これは人体にとって異物ですので免疫細胞の反応が起こります。先に述べたB細胞が反応して、このタンパク質に対する抗体が出来ます。いざ新型コロナウィルスに感染しますと、この抗体がウィルス突起に結合し活性を失くします。また、ワクチンで投与された、この異物タンパクにT細胞も反応してメモリーT細胞も保存されています。いざ感染が起こるとメモリーT細胞も活性化し、キラーT細胞に変化しウィルス破壊もおこるはずです。ワクチンの効果はメモリー細胞がいかに長く維持されるかにかかっています。

 

先月(6月)5日に、二年ぶりにミヤマキリシマ登山を行いました。九重連山の平治岳(ひいじだけ:1643m)に登りましたが、すでに下の方は散り始めていました。前日の雨で、悪路の登山となりました。

 

下山路の片隅に、今年もけなげに、白い花を咲かせた山つつじの老木?に会えました。 帰り路、大きなキノコを付けた巨木を見つけましたが、名前はわかりません。